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 転職
「ウチに来てくれ」といったじゃない

多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。
転職活動で重要な局面はいくつかあります。ですが、どんな人でもまずは「内定」を勝ち取ることを目指すと思います。特に、第1志望の会社からの内定獲得は特別うれしいものですね。
しかし、内定をもらうことだけに注力し過ぎると、うっかり落とし穴にはまってしまうこともあります。
先日、あるITエンジニアから「非常に困ったことになっているのです」と相談を受けました。実際にあったこのケースについて、ここで確認してみましょう。

■中山さんの希望
中山さん(仮名)は当時28歳。私立大学の文系学部を卒業後、以前よりシステム企画業務に興味があったことから、CRM系の自社パッケージを持つ中堅SIer(システムインテグレータ)に入社しました。
その後複数のオープン系開発プロジェクトを経験した中山さん。顧客からの評価も高く、26歳になったころには基本設計以降(一部要件定義フェイズ)でプロジェクトリーダーを務め、3~5人の工程管理までも任せられるまでになっていました。
プロジェクトでの経験を積むにつれ、中山さんはだんだんと次のような希望を持つようになっていきました。
1. より大規模なプロジェクトで顧客との折衝・メンバーのとりまとめをしていきたい
2. 併せて仕事のクオリティに見合う年収アップをしたい
3. 将来はコンサルテーション要素も含む業務に携わりたい

 自社の業界での位置付けを考え、現在の環境でこの3点の希望を満たすのは難しいと感じた中山さんは、転職を決断。活動をスタートしました。

■順調に進んだ転職活動の結果は
初めての転職活動に不安もあったようですが、中山さんは複数の企業をピックアップして応募しました。活動を進めるうち、業界でも準大手に位置付けされる SIer、A社に出合った中山さんは、「自分の希望にぴったりの会社だ」と感じ、A社を第1志望と考えるようになりました。
幸いにも、書類選考通過・1次面接通過と順調に選考は進みました。
1次面接の日に受けた筆記試験の結果が出るのは1週間から10日後で、通常は筆記試験の合否判定後に最終面接である役員面接が行われます。ですが役員の日程の都合から、役員面接を先に行うことになりました。
役員面接でも非常に感触が良く、その場で役員から「ぜひ、うちに来てほしい。人材として期待する」といわれ握手までしたようです。第1志望のA社からそのようなセリフを聞き、中山さんは非常にうれしく感じたそうです。
すぐに転職の決断をした中山さんは、翌日、迷うことなく現職の上司に退職意思を伝えました。上司からは「君には期待をしているんだ。辞めないで頑張ってほしい」と説得されたようですが、中山さんの意思は固く、結局その日のうちに退職は了承されました。
さて役員面接から数日後、A社から連絡がありました。そこで中山さんが聞いたのは、耳を疑うような言葉だったのです。

A社 選考結果ですが、残念ながら不採用との結論に至りました。

中山さん ……え?! 先日、役員の方から「うちに来てくれ」といわれましたが。なぜですか?

A社 当社採用フローの筆記テストの結果が、基準に至らなかったためです。

中山さん ……。

 あまりの結末に、中山さんはしばらく声もなかったそうです。

■どこで失敗したのか?
こんな立場にはなりたくないような現実ですね。ここで、中山さんの転職活動のポイントを検証してみましょう。

・転職を考えたきっかけ
初めての転職であるにもかかわらず、今後のキャリアプランと自社の業界での位置を、非常にしっかりと分析しています。この時点での問題はないと思います。
この「なぜ転職をするのか?」というところは非常に大事なポイントです。皆さんも明確なビジョンを持って挑みましょう。

・会社選び、ターゲットの絞り込み
中山さんは、インターネットでの検索情報とそれまでの業界知識を基に、応募企業を10社ほどピックアップしたとのことでした。これらの企業をあらためて精査したところ、大体の企業で「より大きいプロジェクトの経験」「年収アップ」はかないますが、「コンサルテーション」については残念ながら実現が難しいと思われました。
個人でもさまざまな情報を得られる時代ではありますが、情報が多すぎるために真に役立つ情報がぼやけることもあります。1人だけの情報収集にも限界があります。

・転職活動において冷静であったか
中山さんは最終面接で、役員から「うちに来てくれ」といわれ、イコール「内定」と早合点してしまいました。これが中山さんの最大の失敗ではないかと思います(参考記事:「その『内定』、本当に有効ですか」)。
確かに第1希望の会社で役員からそのようにいわれれば誰でもうれしいはずです。しかし冷静になってみれば「内定」とはいわれていませんし、筆記テストの結果が出る前の暫定的な最終面接であったという事情もありました。
実際に内定をもらったときには、書面、少なくとも電子メールで証拠を残しておきましょう。もしものときに役立つはずです。

・退職意思表示のタイミング
本人の思い込みを基に退職意思を伝えていましたね。やはり通常は正式な内定を得て、労働条件の確認・スタート日の確認などを行い、すべてにおいて問題ないことを確認してから伝えるべきです。
ちなみに中山さんはA社からの不採用連絡の後、上司に事情を話したそうですが、すでに後の祭りで「いまからそういわれても遅いよ。退職処理は済んだ」と冷たい態度を取られたそうです。これはやむを得ないことで、「辞める」といったことで以前のような信頼関係がなくなってしまったのです。

■中山さんの再挑戦
このような事情をヒアリングした後、私は中山さんとともにあらためて転職のポイントを洗い出し、今後の転職活動について再確認をしました。そして将来、コンサルテーション要素を含む業務に携われる企業をピックアップしました。
こうして中山さんは、再チャレンジへと動きだしました。
中山さんは前回の失敗を反省し、早合点はしないこと、不明点は随時相談しながら活動をすることを私と約束しました。
その後複数社で順調に選考が進みました。途中途中でしっかりと報告をしてもらい、不明点の洗い出しや将来望むキャリアの方向性に合うかなどのサポートもした結果、中山さんは無事、流通系に強みのある大手SIerから内定を勝ち取ることができたのです。

再挑戦した中山さんが成功した理由は、以下の3点ではないかと思います。

1. 失敗を謙虚に受け止めたこと
2. くよくよせずに再挑戦したこと
3. 不明点をそのままにせず、相談によって解決を図ったこと

何でもないことのようですが、意外と気付かず、また実行しづらいポイントではないでしょうか。
あらためて皆さんの参考にしてほしいと思います。
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(2007/06/12(火) 12:04)

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